館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

鹿のステンドグラス製作 デザイン (2)

こんにちは。

現在、K様邸向けの鹿のステンドグラスをデザインし直している。

ここでガラスカットのルール、法則なるものをご説明しておこう。

ステンドグラスのガラスカットは基本的にガラスカッターを使って切断している。これはプロであってもアマチュアであっても同じだ。もちろん、ガラスカッター以外にもダイヤモンドのベルトソーやサンドブラストで切る方法などがあるが、よほどのことがない限りそんなものは使わない。コスト的に実用的じゃないからだ。

f:id:mikawakougei:20150312005647j:plain (一般的なガラスカッター)

それを踏まえたうえでデザインの制約を説明する。

例えば、下のようなデザインでステンドグラスを作るとする。

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これをガラスピースに分解するとこんなふうになる。

緑の葉っぱはガラスカッターで問題なく切れる。ところが白い部分のガラスは切ることができない。葉の先の部分で割れてしまうのだ。

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でも、白い部分を三つに分けることでカットすることができるようになる。 くびれたカーブはカットが難しいが、練習すれば切れるようになる。

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これを組み立てると下のようになる。当初の葉っぱのデザインがステンドグラスで作れるようになったわけだ。 しかし、葉っぱの先に延びるカットの線は作業上必要とはいえ、本来はあって欲しくない線なのだ。 こういう線がいっぱいあるデザインは下手なデザインと言われてしまうんだ。

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K様から頂いたデザイン画はステンドをご存じないから当然なのだが、紅葉の葉やら草の葉が多く、これがステンドを難しくしているのだ。

もう一つ制約をお話ししよう。 下の絵を見て欲しい。

二つのカーブが描かれている。上のきついカーブと下の緩いカーブ。 ガラスはカーブもカットできるのだが、問題はそのカーブの出っ張りとへこみ具合なのだ。

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これは紙だからカットできたが、ガラスであったなら上のカーブは割れてしまうだろう。 下のカーブなら簡単にカットできるはずだ。 真ん中のピンクの部分はきついカーブがあるから当然割れてしまう。

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では、どれくらいのカーブまでなら切れるのか。これはその人の技術と経験で決まる。

また、何百種類もあるガラスの質によっては、同じカーブでも、切れるものと切れないものが出てくるんだ。

ステンドグラスのデザインはこういった制約を常に頭に入れて練っていくんだ。