館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

岩瀬先生 (2) 川に落とした一文銭

今週のお題「思い出の先生」

こんにちは。

昨日は中学時代、岩瀬先生にいじめから助けてもらった話をしたが、僕も先生から叱られた経験が無いわけではない。

中学1年のころ、僕の周りではちょっとしたいたずらが流行っていた。

 

僕が中学1年の昭和43年ごろは名鉄三河線が学校グランドのすぐ脇を走っていて、近くには三河楠駅という無人駅があった。

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僕たちは五寸釘を家から持ってきて楠駅の近くに集まった。周りは田んぼばかりなので大人は誰も見ていない。電車が来ない時を見計らい釘を線路に並べ、電車が来るのをじっと待つ。

30分に一度の電車が通り過ぎると轢かれて散らばった五寸釘を探すのだ。

当時はおおらかな時代で、何事もなく過ぎたが、今は列車妨害で立派な犯罪だ。絶対に真似をしてはいけない。

バカな友達が釘ではなく大きな石を置いたらしく、その時は電車が止まって運転手が追いかけてきたそうだ。バカなことをしたもんだ。

 

話がそれたが、轢かれた五寸釘は厚さ2ミリほどに潰れる。それをやすりで先端を尖らせ、手裏剣にするのだ。それを板塀に投げて忍者ごっこをする。

当時は「忍びの者」とか「忍者部隊月光」、「猿飛佐助」、「忍者服部くん」といった忍者番組がはやっていたからだ。

 

そして銭形平次など時代劇で使われる1文銭を真似するのに5円玉を使った。

5円玉をサンドペーパーで文字が消えるまで磨き上げ紐を通して1文銭にするのだ。皆さんは貨幣に加工を加えることが違法であることはご存じだろうか?

そんなことなど知るよしもない僕たちは授業の合間にせっせと5円玉を磨いていた。

それを岩瀬先生に見つかったのだ。

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岩瀬先生は怒らなかったが電車に釘を轢かせることや5円玉をツルツルに磨くのがなぜいけないのかを僕たちに丁寧に説明してくれた。 そしてその後「川に落とした1文銭」の話をしてくれた。

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僕の記憶だと、行商に来た立派な商人(あきんど)が橋を渡るときにうっかり1文銭を川に落とした。商人は橋を下りて川に入り、その1文銭を探した。だけどどうしても見つからず、商人は高いお金を出して人夫をたくさん雇ってまでして1文銭を探させた、という話だ。

この話の教訓は、川に落ちた1文銭はもはやお金ではなく、ただの金屑だ。しかしこれを探してお金として使えば多くの人の手に渡り世の中の役に立つ。探すのに使った大金もまた、世の中を渡って役に立つ・・・、というものだ。

岩瀬先生は、僕たちが磨いたことによって5円玉は世の中の役に立たないものになってしまった。たとえ5円でも大切に扱わなければならないんだよということを言って聞かせてくれたのだ。

 

後で調べるとこの話は東京の民話で、僕が商人だと思っていたのは実は殿様だったようだ。

「川に落ちた一文銭」

岩瀬先生のぬくもりが残るエピソードだ。