館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

逝った先輩たち (12) Fリーダー7

こんにちは。

ちょっと間があいてしまったが、深谷リーダーの話しの続きだ。

アイシン城山工場の派遣社員用駐車場は工場の外にあって、ちょっと離れていた。仕事を終えて駐車場までの500メートルくらいを名技センターの他の社員たちと世間話しをしながら歩いて帰るのだが、深谷さんはそういう性格なのでみんなからは疎まれていた。だから僕が友達と二人で帰るときも深谷さんは一人で遠く離れて後ろから歩いていた。

 

いつものようにこっぴどく嫌みを言われたある日のこと、思い詰めていた僕は、仕事を終わって帰り際に、アイシン城山工場での勤務を辞めたいと深谷さんに切り出した。

f:id:mikawakougei:20151116235703j:plain

 

そのとき深谷さんは顔色を変え、僕にこういった。

深谷さん 「神谷君、俺がどうしてお前に厳しくするか分かるか?」

僕 「僕が嫌いなんでしょ?」

深谷さん 「そうじゃない。おらぁな、まっつぁん(松浦本部長:中部事業部の偉い人)から、神谷君を一人前の設計者にしてやってくれと頼まれているんだ。だから敢えて厳しくしてるんだ。」

僕 「そんなこと、信じられません。」

深谷さん 「神谷君、自分に回ってくる仕事が他の人と違うこと、感じたことはないか。山口さんはいつもゲージの設計、大西さんだってそんなに難しい設計はやってない。お前には敢えて難しい仕事や、いろんな種類の設計をまわしているんだ。」

これが深谷さんの本心かどうかは分からないが、確かに思い当たるフシはある。僕はその日、一旦矛を収めた。

気のせいかその日以来、深谷さんの態度がちょっと優しくなった。

 

そんなある日、アイシン設計統括の石川さんと深谷さんに呼び出された。机の向こう側に石川さんと深谷さんが並んで座り、反対側に僕が一人で座った。

f:id:mikawakougei:20151106235932j:plain (イメージ)

僕 「何でしょう。」

石川さん 「神谷君、ちょっと難しい仕事があるんだ。(石川さんと深谷さんが顔を見合わせ) 深谷君と話し合って神谷君にやってもらうことにしたんだけど、どう?やってみる?」

僕 (ちょっと不安げに)「どんな仕事ですか?」

 

研削盤NCレトロフィット

それは城山工場でも初めての取り組みで、使わなくなった旧式の研削盤に最新のメカやコンピューターを組み込んで完全自動で研磨加工できるようにする。 というもの。

f:id:mikawakougei:20151203003256j:plain (旧式の研削盤:イメージ)

 

f:id:mikawakougei:20151203003402j:plain (NCレトロフィットした研削盤:イメージ)

 

僕 「僕にできるでしょうか。」

石川さん 「誰もやったことないんだ。チャレンジ、チャレンジ。 なにか有ったら私も深谷君も協力するからやってごらんよ。」

かくして1年以上を費やす城山工場前代未聞のプロジェクトが始まった。