館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

グランドホテル山海館25 ミラー取付け2

こんにちは。

山海館の会長さんは僕たちが脱衣所ミラーの取付けをしているのを嬉しそうに脇で眺めていたが、ふと 

「昔、旅館の改装を頼んだことがあって、その大工が現場でお客さんの前で夫婦喧嘩を始めたんだわ。あれは見苦しいなぁ。」

会長は唐突に語り始めた。

「へぇ、そんなことがあったんですか?」と、僕とカミさん。

「夫婦で作業に来とったんだがな、わしが見ている目の前で奥さんを怒鳴りつけて、挙げ句の果ては奥さんに道具を投げつけておったわ。ありゃあ見苦しいわ。」

続けて会長は、

「わしら男なんてみーんな女房に甘えておるんだわ。女房を亡くしてみるとよー分かるわ。  奥さんは大事にせにゃいかんよ。」

 

僕たち二人が力を合わせて作業している姿を見て、去年亡くなった奥さん、女将を思い出したのだろうか、しみじみ僕たちに語りかける。

 

「わしら夫婦仲は良かったよ。そりゃ、たまには夫婦げんかしたこともあるけどな、この旅館を始めた頃は夜11時過ぎまで一緒に皿洗いをしたもんだよ。 でも、辛いと思ったことなんか無かったなぁ・・。」

 

なんだかこっちまで切なくなってきた。カミさんと女将が重なって見える。

 

それからしばらくして「あとは頼むね。」と言い残し、会長は家に帰っていった。

 

あとは僕たち二人だけだ。脱衣所の取り付けが終わったのが午前2時半。

僕はカミさんを気遣って「もうそろそろ切り上げようか?」と言うと、「私だったら大丈夫だからやれるところまでやろうよ。」と言ってくれた。

 

次は男湯の洗い場から作業を始める。古い鏡を取り外し、新しい鏡に合わせたテンプレートを壁に当ててタイルの穴あけをする。下穴を明けておいて・・、

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あとは水をかけながら一気に明ける。幸いなことに思ったよりタイルが柔らかい。磁器ではなく陶器タイルだ。硬いのは表面の薄皮だけだった。

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金具を付けてミラーを取り付け、周りをシリコンコーキングする。このシリコン作業に手間がかかるのだ。

最後に養生フィルムを剥がして取り付け完了。

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 男湯の3枚を取り付けたところで午前6時。外はもう明るくなっていた。

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夜勤でフロントに詰めていた番頭さんがやってきて

三河さん、まだやってたんですか、頑張りますねー。 どうです?良かったら一風呂浴びていってください。」と優しい言葉をかけてくれた。

「いや、そろそろ帰ります。ありがとうございました。」

 

もうそろそろ帰らないと美術館の開館準備が出来ない。片づけをしていると気の早いお客さんがもう、お風呂に入りに来た。

 

残りは4月3日、今夜11時から出直すことにする。