館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

蔵の暗~い思い出

こんにちは。

 

きょうは蔵の修理見積りが出た。予想よりも値打ちだったので修理してもらうことにした。

 

蔵というのは一種独特の雰囲気がある。そしてこの蔵にはいろいろ思い出もある。

 

伊勢湾台風の上陸時、外の喧騒とは裏腹に、蔵の中は時おり小さく「ミシッ‥ミシッ。」ときしむ音がするくらいでどっしりとした静かな空間は、何物にも代えがたい安心感があった。

しかし、平時においてはその重々しく静かなさまが、時に言いようのない恐ろしさを醸すものだ。

 

僕は幼い頃、この蔵に閉じ込められたことがある。

何かいたずらをしたのであろう。誰に押し込められたか記憶にないが、すんなり素直に入ったとは到底考えられないので、恐らく泣きじゃくりながら抵抗するのを無理やり抱えられて押し込められたであろう。

そんなことをするのは祖父に違いない。

祖父は僕を蔵に放り込むと、その重い引き戸を閉めた。

蔵は重い漆喰塗りの引き戸と、わずかに空気穴の明いた木戸の二重になっていて、祖父は木戸を閉めたのだ。

空気穴からは外の明かりが洩れる。

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きっとひどく泣いたに違いない。冷たい空気とシーンとした静けさが幼い心を押しつぶそうとするのだ。

 

どれくらいの時間が経ったであろうか?

" 助けて " くれたのは母だった。母は優しかった。

 

 

祖父はおよそ "おじいちゃん" という人種とは程遠い人だった。孫を愛でるということはなく、いつも厳しく怖い大人だった。少なくとも幼い僕にはそう映った。

 

そういう僕もかなりの意地っ張りだったらしく、母からこんな話を聞いた。

ある時、やはり僕が何かいたずらをしたとみえて、それに腹を立てた祖父が僕を蔵に閉じ込めようと、引き戸の前の石段に僕を押さえつけていたらしい。

祖父は僕に馬乗りになり、僕の頭を石段に押しつけながら「この坊主、あやまらんか!」と真顔で怒っていたというのだ。

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それを見た母がびっくりして

「わっちが(私が)言って聞かせるで!」と思わず叫んで祖父を払いのけたのだった。

 

母というのは偉大だ。ここぞという時には義父にだって物怖じしない。

だから僕には母の思い出はいい思い出しか残っていない。

 

後で母が、「それでもあんたはあやまらんかったでな。」と笑った。

しょーのないガキだ。(笑)

 

そういう僕もいつか息子を蔵に押し込んだことがある。息子も僕と同じ光景を見たわけだ。

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僕と違うのは息子はすぐに謝ったので多分15分くらいで出してやった。

 

我が家の男子は一度はこの蔵に入ることになっている。きっと祖父も入ったのだ。(笑)

 

壊すわけにはいかない。