こんにちは。
うちのミュージアムの東に田んぼの一帯があって、その中に離れ小島のような畑がある。
その畑に一週間ほど前から橙色の網のようなものが仕掛けられた。
この畑の持ち主はお隣のJKさんだ。先日、農道でJKさんとすれ違ったので、「Jさん、あの橙はなに?」と、僕が尋ねると、
「豆を植えようと思うんだけど、カラスがみんなほじっちゃうのでカラス除けだがね。」
JKさんは御年70過ぎのおばさんで、未亡人である。
毎日のようにこの畑に来ては何か耕作をしている。
その畑に異変が起きたのはきょうだ。
カミさんが「ねえねえ、畑の網にカラスが掛かってるよ。」と、僕の所にやってきた。
畑の上には橙色の蚊帳のようなものが張ってあり、その網にカラスが足を取られたのだ。
蚊帳は逆さ富士のように大きく垂れさがり、その先端には黒い塊が引っ掛かっている。
初めのうちはもがいていたらしいが、僕が見たときは疲れたのか諦めたのか動かない。
このままにしておくと衰弱して死んでしまうかもしれない。
悪さばかりするカラスではあるが、このまま殺してしまうのは可哀そうだ。
僕はJKさんの自宅に電話をした。
「ホントぉ、可哀そうだで網を切ってやるかねぇ。」 心優しいJKさんは助っ人を連れて畑にやってきた。よく見ると連れのカラスがもう一羽蚊帳の中にいて、助けようとすると蚊帳の中を逃げ回って、また網に引っ掛かる。一筋縄ではいかないようだ。
それでも最後は助っ人に捕まって蚊帳の外に出された。
JKさんが近づくと羽ばたいて逃げようとするが網は足から取れない。
JKさんはカラスの足から絡みついた網を丁寧に切り離し、逃がしてやった。
頭のいいカラスだが、これに懲りてもう来ないだろうか?
僕はこの救出劇を仕事もしないで双眼鏡でただ見物していた。