館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

逝った先輩たち (9) Fリーダー4

こんにちは。

深谷さんは神経質な性格なので、名技センターの設計者たちと軋轢を生んでいた。僕は大西さんや山口さんといった年上の先輩たちとは気があって仲良くしていた。

だけど大西さんや伊藤さんは時々深谷さんとぶつかることがあり、二人とも深谷さんを嫌っていた。山口さんは温厚な性格で深谷さんに何か言われても笑って受け流す人付き合いの上手い人だった。

大西さんは時々チョンボ(設計や図面のミス)をやらかす人で、深谷さんの図面チェックに引っかかるといつもひともんちゃくあったのだ。

 

ただ、大西さんや山口さんは深谷さんより年上ということもあり、深谷さんも一応遠慮してきつい言葉は使わなかった。それでも大西さんは影で僕には「あの野郎、・・」とこぼしていた。

そう言う僕も深谷さんにはこっぴどくやられたものだ。

僕の場合は年下ということで、いつも容赦ないきつい言葉を投げつけられた。

 

深谷さんの検図中は、いつ呼ばれるかと心中穏やかではない。そんなとき、

「神谷君やぁ。」

低い声で僕を呼ぶ。 叱られるときはいつも名前の後に「やぁ」が付く。

僕 「なんですか?」

深谷さん 「おまえ、どうやってこれを加工するつもりだ。」

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もう、僕の心臓は飛び出しそうなくらい激しく打っている。

僕 「前の図面がそうなっていましたから、参考にしてその形にしました。」

僕は勝手の分からない治工具に、与えられた参考図と全く同じやり方を真似ていた。始めの1~2回は不機嫌そうにそれでも図面を通してくれた深谷さんだが、そのときは違った。

深谷さん 「じゃあお前はなにか。図面が間違っていたり不具合が起きても、前の図面がそうなっていたからと、前の図面のせいにするのか。お前は自分の頭で考えんのか? それでも設計といえるのか。」

僕が一所懸命言い訳をすると

「じゃあね、」とさらにたたみかけてくる。

 

深谷さんは興奮してくると下のまぶたと口角がぴくぴくし始め、どもる癖があった。

とにかく相手を完膚無きまでに論破しようとするのだ。

そう、ちょうど今人気の番組、スカッとジャパンの「イヤミ課長」みたいに。ねちねちと相手を責める。

だけどそれに輪をかけて頭に来るのが、深谷さんの言うことがいちいちごもっともなのだ。

 

僕は反論の気力もなく、図面を書き直す。