館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

“ 潮騒 ”の島 神島6 神島灯台

こんにちは。

神島灯台へは八代神社を出て、さっき来た道と逆の方角、つまり左へ行きなさいと道しるべがある。神社すぐ前の石段を下りて左に折れると風雨にさらされ風化して苔むした古い唐獅子が一双で置かれていた。

真新しい唐獅子に置き換えたものの、古い唐獅子を捨てるのも気が引けてここに安置してあるのだろう。

 

それから20メートルほど行くと道はT字路に突き当たった。右は下り坂になっている。

小説の中で

「若者はすでに深閑としている小学校の校庭を抜け、水車のかたわらの坂を上った。石段を登って八代神社の裏手に出る。神社の庭に夕闇に包まれた桃の花がしらじらと見える。そこから灯台までは十分足らず登ればよいのである。」

と、記している。ここで言う小学校は現在の場所ではなく、今は廃校になった山の中腹にあった旧小学校である。

そして神社の裏手に出てくる道が右側の下り坂なのだろう。今は観光シーズンではないのか、その道は手入れされておらず、草に覆われている。

 

神島灯台へはこのT字路を左に上っていく。足元が滑らないようにと道の中央はコンクリートの階段と、その両脇をスロープで挟んである。

 

コンクリートの坂が終わり、右へカーブするころには海側の木々が開け、伊勢海が見え隠れする。{現在は伊勢湾と言うが、小説の当時は伊勢海(いせかい)と言っていたようなので、僕もそれに倣ってみた}

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海風が顔をなでるようになり、それまでの息苦しさから少し解放される。そのまま上り続けると少しずつ道が綺麗になっていき、潮風に錆びないようにと、亜鉛メッキされた鉄の道路柵が現れた。ここまで来るとアスファルト舗装がされている。灯台が近いしるしだろう。

 

道の右側に家2~3軒分の平地とコンクリート造りの倉庫のようなものがある。平地は草だらけだ。

 

小説では

灯台へ昇るコンクリートの段々の手前に小さな畑を控えた灯台長の官舎があった。」

とある。官舎らしきものは無かったが、映画の中に出てくる官舎はまさしくここに建てられたものだ。

僕はなんだか自分の子供の頃を思い出すような懐かしい気持ちになった。

 

そこには小説の紹介と灯台の沿革、装備の説明書きがあった。

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そしてこれが「灯台へ昇るコンクリートの段々」だ。木の陰から姿を覗かせる白亜の灯台は、その全体の半分を木々にかくして僕たちの好奇心を誘っているようである。

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段々を登り切ると灯台はいよいよその全容を現した。

 

美しい。

 

灯台と言う言葉から想像する高い煙突のような胴は無いが、痛みの少ない白いタイル張りの外観は真新しくも見える。

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東の伊良湖水道を向いた灯台の一階には大きな4つの窓があり、そのどれもに縦格子が取り付けられていて中の様子を伺い知ることはできないが、格子の隙間から、額に飾られた写真や灯火に使う電球のようなものが見えた。

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恐らく昔使われていたものだろう。

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灯台すぐ脇には「番小屋」がある。

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小説の中で

「女の坂を曲がると、窓々を閉め、帷(とばり)を下ろして、嵐のなかに身をかがめている灯台長官舎の平屋が見える。灯台へむかう石段を上る。閉め切った番小屋には今日は灯台員の姿も見えず、雨のしぶきに濡れて鳴りやまない硝子戸のなかには‥‥」

この建物が当時のままかどうかは定かでないが、朽ち果てたシャッターボックスや絡まるツタの屋根が長い時間の経過を感じさせる。

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今は灯台にも、この番小屋にも久しく人の立ち入った形跡はない。

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ここは三島由紀夫が島の眺めのもっとも美しい二つの場所の一つとして挙げたところだ。その記述の通り太平洋と伊勢海が一望でき、伊良湖水道を行き交う大小の船を見ることができる。

 

灯台の明かりをともしに行く灯台長。

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番小屋は当時のままのようだ。

 

 

カミさんとここでしばらく眺めを堪能して、水分補給をしたら次の目的地「観的哨」へ向かう。

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八代神社から神島灯台へ至る道です。

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