館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

忘れられない思い出 ガラス体験の美少女

こんにちは。

美術館の人気メニューの一つに「ガラス体験コース」がある。初めての人でも1~2時間で綺麗なガラス作品が作れるというものだ。きょうも沢山の体験客で賑わった。

f:id:mikawakougei:20150223003021j:plain (本日最後のお客様)

毎日、いろんなお客様が訪れる。若いカップル、学生さん、年配のご夫婦、家族連れなど、実に多様だ。それぞれいろんな思いでここにやってこられる。幸せいっぱいの人もいれば悩みを抱えた人もいる。

昨日は、金髪のドイツ人美女と小柄でキュートな二人連れがあった。なんでも大阪大学の学生さんとか。小柄な子の方が3日前に失恋したそうで、ドイツ人の方が「先生、慰めてあげてよ」と、冗談交じりに僕に暴露した。

相手が誰であれ、僕たちは精一杯、楽しい思い出を持ち帰ってもらえるよう心がけている。事情は分からなくても、僕たちのもてなしがここを訪れてくれたお客様を幸せにしたり、時には慰め、励ますことになると思っているからだ。

 

僕たちにそう思わせる出来事が昔あった。・・・忘れもしない。

 

この美術館がオープンしてから間もない頃だから多分、13~14年前だと思う。

4~5名の女性グループがやってきて、ステンドグラスの体験をしたいという。年の頃は二十歳前後、もしかしたら学生さんだったかもしれない。 その中にニット帽をかぶった、ひときわ色白で透き通るような肌の、美しい娘さんがいた。エキゾチックな顔立ちで、口数こそ少なかったが、ニコニコしながら周りの友達と仲良く作品を作ってくれた。

僕はこの頃、綺麗な女性やさわやかなお客さんが来ると、時々写真を撮らせてもらっては体験コースのチラシなどに使わせてもらっていた。

僕はこの娘さんが気に入り、チラシに使う写真に欲しいと思った。

作品が出来上がった頃、集合写真を撮らせてくれるようお願いしたところ快く承諾してくれた。

カメラは当時デジカメなどというものはなく、フィルムを使う一眼レフカメラだった。中には印刷に適したポジフィルム(スライド用フィルム)が入っている。

教室で、作品を前に、彼女は友達に囲まれて嬉しそうな笑顔で写真に収まった。

 

それから2週間ほど経った頃だろうか、グループの中にいた2人の女性が美術館にやってきた。

先日、ここで撮った写真を貸して欲しいというのだ。

どうして写真が必要なのかと尋ねると、葬儀に使う写真が無いのだという。

事情を聞くと、ニット帽の彼女は白血病で、あまり自分の写真を撮りたがらなかったそうだ。

入院する前に、彼女の希望で友達とここを訪れたのだという。ここで過ごした数時間はとても良い思い出になったと、喜んでいたそうだ。

それを聞かされた僕たちは言葉を失った。

ニット帽のことは気になっていたが、こちらからお客様に立ち入ったことは聞かないようにしている。今思えば普通に接して差し上げたことが、彼女によけいな気遣いをさせず、良かったのかもしれない。

 

フィルムはご両親の元にあるのが一番幸せだろうと、差し上げることにした。

 

現在の医療であれば救われたかもしれない若い命。13年経った今、思い出しても切なくなる出来事だった。

 

彼女の天国での幸せを祈らずにはいられません。