館長の気ままな日記

三河工芸ガラス美術館の館長(オーナー) " カズ " こと神谷一彦の勝手気ままな独り言です。

三河工芸の館長が書く日記です

家出

こんにちは。

 

理由ははっきり覚えていないが小学校1,2年の頃、母と喧嘩して家出したことがある。何かをねだって断られたのか、あるいはいたずらをとがめられたのか、普段は優しい母が僕を叱ったのだ。

いじけた僕は母に心配をかけてやろうと思った。

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そうだ、家出をしてやろう。

 

家出はこれまで何回もしている。いつもは門長屋の空き部屋か納屋だった。

そのたびにしばらくたってから母が探しに来た。

 

「かぁちゃん、今回は本気だからな。今に見てろよ。」

何を思ったのか、長旅になると思ったのか、僕はズボンのポケットにビスケットを詰め込んで自転車で漕ぎ出した。向かったのは‥、

母の在所だ。安城市で家からは9キロ余りある。

 

お正月やお盆など、母と姉と一緒に自転車で漕いでいったから、おぼろげながら道は覚えていた。

当時は地道でリヤカーや自転車の往来は多かったが自動車はあまり走っていなかった。

西尾の下町を通って米津橋を渡り、あとはほぼ一直線だ。

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在所には優しいおじいさん、おばあさんのほか、僕より4つ上の叔父「ボクちゃん」がいてよく遊んでくれたのだ。他にボクちゃんのすぐ上の緑姉さんもいた。

在所はとにかく楽しかった。厳しい我が家と違って楽園のようだったのだ。

 

在所に着くと出迎えてくれたのはおばあさんだった。

いつものように優しく「よぉきたなぁ。」と出迎えてくれるのを期待していたのだがちょっと違った。

おばあさんは驚いた顔をして、「かぁくん、一人で来たのかぇ?」と聞いた。

「かぁちゃんは知っとるのかぇ?」

僕は「んん?・・うん。」と答えた。

 

しばらく経っておばあさんが、「きょうは泊まっていき。」と言った。

恐らく母に電話をしたのだ。きっと事情を話したことだろう。

 

結局母は迎えに来ず、僕は夏休み中在所で過ごすことになった。

ボクちゃんと花火を上げたり、虫取りをしたり、星を見たり‥、

 

毎日が夢のように過ぎていった。