こんにちは。
いま思い出してもぞっとする思い出がある。
いつの頃かはっきりは覚えていないが、多分、僕が小学1~2年生の頃だった気がする。
僕には三つ年上の姉がいるが、子供の頃から仲が良く、いつも一緒に遊んだ。 町内には姉と同年の女の子が二人いて、姉を含め、「3人娘」は良く一緒に遊んでいた。その中に僕も時々お仲間に入れてもらって遊んでいたのだ。
ある夜のこと、姉たちは怪談話をしようということになり、僕の家に集合することになったのだ。
僕の家は、僕が幼い頃まで専業農家、いわゆる地主さんで、もっと前は庄屋さんだったと聞く。
それはともかくとして、そんなわけでうちには大きくてしっかりした屋根付きの門があった。門の両脇には門長屋があって、そこには藁やら農機具が保管してあった。
三人娘は我が家の門長屋の一つを「怪談劇場」に選んだのだ。母屋までは30メートルくらい離れていて、夜は大人は来ない。納屋なのでもちろん電灯などない。
ちょっと想像しにくいだろうが、門の外にある道路は、まだまだ舗装などされていない地道で、今と違って車など夜通し1台も通らない。街灯もなく、夜になれば真っ暗闇なのだ。物音一つしない。
僕らが集まったのは南向きの門の左側にある東側の納屋だった。多分、時刻は夜8時頃。
真っ暗ではお互いの顔も見えないのでろうそくをともして持っていった。
4人は納屋の小さい木戸をそっと開け、納屋の中央にろうそくを置いて車座になって座った。
一人ずつ順番に、自分が用意した怖い話をする。
ろうそくの明かりに照らされたみんなの顔だけが強調されて、だんだんと怖いムードが高まっていく・・・。
だけど、僕が思い出してもぞっとするのは怪談の内容ではない。 僕たちがいた場所なのだ。
古い木造の納屋には収穫されてできた、乾燥した藁が納屋中に高く積まれていたのだ。
僕たちはうずたかく積まれた藁の間の1.5メートル四方のわずかな隙間に身を寄せ合って怪談話に興じていたのだ。
そのとき突然木戸が開いた。
「あんたたち!なにしとんの !!」
お母ちゃんだった。
「火事にでもなったらどうすんの!」
僕たちはこっぴどく叱られた。
何かの弾みでろうそくの火が藁に燃え移ろうものなら、たちまち藁は燃え上がり、僕たちは木戸から出られずに死んでいたかもしれない。
子供というのは全く危険を予期できないでいる。
自分の子であれ他人の子であれ、危ないことや間違ったことをしているのを見かけたら、しっかり叱ってやったほうがいい。
彼らは何も知らないのだから。